「調剤未経験だけど、調剤薬局に転職しても大丈夫だろうか」
今の仕事に負担を感じ、もう少し落ち着いた働き方ができたら…と思う一方で、未経験で調剤薬局に飛び込むことに怖さを感じている方は少なくありません。
結論から言うと、調剤未経験でも調剤薬局への転職は十分可能です。
実際、未経験可の求人は多く、教育体制やサポート環境が整った職場も増えています。
私も調剤未経験の状態から製薬会社を辞め、調剤薬局へ転職した一人です。
この記事では
- 調剤未経験でも転職できる理由
- 未経験薬剤師が感じやすい不安とそのリアルな対処法
- 後悔しない薬局の選び方
- 実体験にもとづく「未経験スタート」の流れ
を現場経験者の視点で正直に解説します。
この記事を読めば、「これなら自分でもいけそう」と思えるようになるはずです。
失敗しない転職を実現したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
未経験でも調剤薬局に転職できる?結論:できます!

結論から言うと、調剤未経験でも調剤薬局への転職は可能です。
理由は以下の3つ
- 未経験可の求人が多数
- 研修制度が整った薬局が多い
- 業務内容がシンプルで覚えやすい

私も全くの未経験で製薬会社から調剤薬局への転職に成功しました
未経験でも調剤薬局への転職は怖くない。その理由を解説していきます。
未経験可の求人が多数
まず、調剤薬局は人手不足の業界であり、「未経験可」の求人が多数存在します。
薬剤師専門の大手転職サイト・ファルマスタッフでは、全国の調剤薬局約40,000件の求人のうち、「未経験可」の求人は約15,000件(2025年11月30日現在)です。
それだけあれば、どこかに自分に合った職場が見つけられそうじゃないですか?
ではなぜ人手不足なのでしょうか。これは調剤薬局数の増加に起因しています。
高齢化による在宅薬剤管理や、国が推進するかかりつけ薬局機能の普及などにより調剤薬局へのニーズは高まる一方です。1989年(平成元年)には36,670件だった薬局数が、2018年(平成30年)には59,613件に増加。つまり薬剤師の需要も高まっているということです。


また、薬局薬剤師の3分の2を女性が占めており、結婚や出産で離職する薬剤師が多いことも人手不足の要因となっています。
ハローワークの求人情報からも薬剤師の求人倍率は3.57倍(2024年度)。まだまだ売り手市場といえるでしょう。
研修制度が整った薬局が多い
調剤薬局では、研修制度が整った会社が多く、新卒・未経験薬剤師が無理なく学べる環境が用意されています。
大手調剤薬局には独自の研修制度があり、入社時だけでなく継続的な人材育成に力を入れています。薬剤師の生涯学習をサポートするだけでなく、組織人としてのキャリアアッププログラムも用意されており、至れり尽くせりの環境です。
大手以外でも、認定薬剤師資格取得のための研修会費用を補助するなど、薬剤師の学びを支える制度が用意されているところが少なくありません。
認定薬剤師資格はeラーニングでも取得可能です。eラーニングに興味のある方はこちらの記事も参考にしてください。
業務内容がシンプルで覚えやすい
調剤薬局の仕事内容はシンプル。


処方箋受付→調剤→監査→投薬(服薬指導)→薬歴記録
薬局ごとにやり方の違いはあれど、基本的にはこれらの業務の繰り返しです。
未経験者はまず調剤から覚えていくことになるでしょう。
その後、監査や服薬指導などの業務へとステップアップしていきます。



最初は覚えることが多くて大変ですが、半年もすれば十分慣れます。
調剤未経験薬剤師の不安材料と対処法


「未経験でも大丈夫」と言われても不安はありますよね。
ここでは、調剤未経験の薬剤師が初めて調剤薬局に転職するときの不安材料とその対処法をお伝えします。
薬の知識に自信がない|調剤未経験でも問題ない理由
調剤未経験の薬剤師が最も不安を感じるのは「薬の知識がないけど大丈夫かな?」ということではないでしょうか。
結論、国家試験に合格してる時点で大丈夫です!!
よく出る薬については仕事をしながらだんだんと覚えていけます。また、患者さんに提供する薬情には効能効果、副作用が書いてあるので、それを見ればだいたいわかります。
さらに「今日の治療薬」など1冊もっておくと、自己学習できるのでよいでしょう。
新人薬剤師には「今日の治療薬」がおすすめ!以下の記事で解説していますので興味のある方はどうぞ。
大変なのは最初の数ヶ月|調剤未経験でつまづきやすい実務
調剤未経験で調剤薬局に転職した場合、大変なのは最初の数ヶ月です。
- 薬の名前が覚えられない
- 劇薬や向精神病薬の区別がつかない
- 調剤(ピッキング)に時間がかかる
上記は私が初めて調剤薬局で働き始めたときに感じた課題です。
処方箋には薬の名前が「一般名(成分名)」で記載されていることがありますが、実際の薬の名前は一般名とは異なります。最初のうちは一般名と製品名が一致しなくて戸惑いました。
劇薬と向精神病薬は他の薬と区別して配置されています。そのため、薬の名前がわかっても劇薬か向精神病薬かがわからないと、薬を探すのに手間取ってしまい、調剤に時間がかかっていました。
最近ではピッキングは薬剤師以外のスタッフが行うところも増えているため、そういうところでは関係ないかもしれませんが。
最初に覚えるべき業務は薬局により異なりますが、要領の悪い私でも数ヶ月で慣れたので安心してください。
職場の人間関係への不安
「職場の人間関係が悪かったらどうしよう?」という不安もよくある悩みです。
調剤薬局は狭い薬局内で限られた人員で働くことが多いため、密な人間関係に悩む人も少なくありません。
できれば現場を見学して雰囲気を確かめてから就職することをおすすめします。転職エージェントを利用すれば会社の方針や職場の雰囲気を教えてもらえるので、活用しましょう。
実際入社してから困ることがあったら、職場の上司か転職エージェントに相談してください。
患者対応・クレーム対応への不安
接客業の経験がない人にとっては、対人業務に適応できるかも不安材料のひとつでしょう。
相手に合わせた臨機応変な対応が求められるため、コミュニケーション能力が必須です。
逆に、これまでの仕事で培ったコミュニケーションスキルを活かせるため、調剤未経験でも能力を発揮しやすい部分でもあります。
基本的には「相手の話に耳を傾けること」「真摯に対応すること」を心がければ大丈夫。「人と話すのがとにかく苦手」という人でなければ心配ありません。
「患者さんからの質問に答えられなかったらどうしよう」「クレーマーが来たら?」
そんなときは薬局長や先輩薬剤師が対応してくれます。自分1人で解決しようとする必要はありません。
調剤薬局薬剤師の仕事内容


調剤薬局における薬剤師の主な仕事内容をご紹介します。
調剤・監査
調剤とは、医師の処方箋をもとに薬を取りそろえ、必要に応じて粉砕したり一包化したり、軟膏を混合したりすることです。
次に、監査を担当する薬剤師が、処方箋通り薬が調剤されているかをダブルチェックします。
調剤や監査の際に、薬の量や飲み合わせ、重複投与、禁忌・アレルギーの有無などをチェックします。
処方内容に疑問があれば、医師へ疑義照会をして処方変更を提案することも大事な役割です。
服薬指導
患者さんに薬の効能・飲み方・タイミング・副作用の注意点などをわかりやすく説明し、生活習慣もふまえて飲み忘れ対策などをアドバイスします。
不安や疑問の相談に乗り、継続して通う患者さんとは信頼関係を築きながら治療を支えます。
薬歴管理
患者ごとの薬歴(薬の履歴、副作用歴、アレルギー、生活背景など)を記録し、次回来局時や他の医療機関の処方との整合性チェックに活用します。
在庫管理
薬局内の在庫管理、使用期限の確認、温度管理、麻薬・向精神薬などの厳格な管理も担います。
健康相談・OTC販売・在宅医療
市販薬の選び方、サプリメントとの飲み合わせ、生活習慣病予防などの健康相談に対応し、必要に応じて受診勧奨を行います。
通院や来局が難しい患者さんの自宅や施設を訪問し、薬のセット・服薬状況の確認・残薬調整などを行う在宅医療業務をする薬局も増えています
1日の流れ
調剤薬局における1日の流れをご紹介します。
| 8:45〜9:00 | 出勤・開局準備 | 白衣に着替え、分包機やPCの立ち上げ、清掃、朝礼などを行う |
| 9:00〜12:00 | 午前の外来対応 | 処方箋受付→調剤・監査→服薬指導→薬歴記載を繰り返す卸の納品受取り |
| 12:00〜13:00 | 昼休憩(交代制) | 患者さんの波を見ながら交代で休憩 |
| 13:00〜18:00 | 午後の外来対応 | 処方箋受付→調剤・監査→服薬指導→薬歴記載を繰り返す薬の発注 |
| 18:00〜18:15 | 閉局、退勤 | レジ締め、機器の清掃・電源確認などを行い退勤 |
調剤未経験薬剤師が「後悔しない」薬局選びのポイント4選


調剤未経験の薬剤師が初めて調剤薬局で働き始めるのなら、薬局選びは重要です。
未経験の業界に飛び込むことはそれだけでストレスを伴います。未経験者にとって良い薬局を選ぶことで、そのストレスを最小限にできます。
「未経験可」求人を選ぶ
当然のことですが「未経験可」の求人を選びましょう。
未経験可の条件で求人している職場は、基本的に人材を育てる考えをもっています。
職場に新人を育てる意識や余裕のあるところが多いため、未経験者が採用されやすい上、入社後の受け入れ態勢が整っているのが特徴です。
教育制度が整っている職場を選ぶ
調剤未経験で薬剤師として働きたい場合、初めての職場は、教育制度が整っている職場を選ぶのがおすすめです。
処方箋の読み方・疑義照会・服薬指導・薬歴管理の仕方など、はじめは右も左もわかりません。
教育制度の整った職場で系統立てて教えてもらえると、初めての調剤薬局でもスムーズにスタートできます。
「1人薬剤師」の薬局は避ける
初めての調剤薬局選びで絶対避けるべきは、薬剤師の数が少ない薬局です。
薬剤師の数が少ないと、時間帯によっては「1人薬剤師」になってしまうおそれがあります。
わからないことがあったときに相談できる相手がいなくてミスをしてしまっては大変です。自分以外の薬剤師が常時2名以上いる薬局を選びましょう。
転職エージェントを活用する
調剤未経験から調剤薬局に転職する場合「転職エージェント」は強い味方です。
転職エージェントを利用すれば、上述した「未経験可の求人」「教育制度の整った職場」「薬剤師数が多い職場」を効率よく見つけられます。
転職エージェントは、求人票だけではわからない職場の雰囲気を教えてくれたりもします。
初めて調剤薬局に転職するのなら、転職エージェントをぜひ活用しましょう。


異業種から調剤薬局に転職する際の注意点


異業種から調剤薬局への転職を検討している方へお伝えしておきたいこと。それは以下の2つです。
- 今より年収が下がるかもしれない
- 40歳以上になると転職が難しくなる
それぞれ解説します。
年収が下がるおそれがある
調剤薬局に転職した最初の年は、今よりも年収が下がるおそれがあります。
現職でどんなにキャリアを積んでいても、調剤薬局では「新人」「未経験」扱いです。
新卒で製薬会社に入社してそれなりにキャリアを積んできた人の場合、年収が下がる可能性が高くなります。
MRと薬剤師の年代ごとの平均年収(引用元:jobtag)
| 年代 | MR | 薬剤師 |
|---|---|---|
| 30〜34歳 | 558.2万円 | 564.4万円 |
| 35〜39歳 | 645.7万円 | 614.1万円 |
MRと薬剤師の平均年収を比較すると、30〜34歳では薬剤師がやや年収が高めですが、30代後半になるとMRの方が約30万円も年収が高くなっています。
ここで示されている平均年収は経験者も含めた金額のため、未経験では年収450万円前後が標準です。
転職後、管理薬剤師やマネージャーなど管理職になれば年収も上がりますが、最初は年収が下がることは想定しておくとよいでしょう。
40歳以上になると転職難易度が上がる
当然ですが、未経験からの調剤薬局薬剤師デビューは早いにこしたことありません。
40歳以上になると、未経験で調剤薬局に転職するハードルは徐々に上がってきます。
定年までの時間が短くなる分、企業側が採用をためらうからです。
また、指導するスタッフが年下の確率が上がるため、入社してからお互い「やりづらい」と感じるケースもあります。
年齢を重ねるほど、調剤未経験薬剤師の薬局への転職は難しくなります。学ぶ姿勢と謙虚な態度が大事です。
【実例】初めての調剤薬局で受けた指導5ステップ


私が初めて調剤薬局に転職したとき、どのように指導を受けたか、5つに分けてご紹介します。
注意:あくまで1例です。すべての調剤薬局でこのとおりに指導されるわけではありません。
ステップ1: 入社後2日間の全体教育
入社後最初の2日間は中途採用者対象の全体研修を受けました。
内容は、保険薬局の基礎、業務フロー、接客についてです。
保険点数の計算方法を教わって「こんなの覚えられないよ」と焦った記憶があります。
実際には、事務さんとレセコンが計算するので覚える必要はありませんでした。
ステップ2:店舗配属&環境になれる(1週目)
3日目からは店舗に配属。
初めての店舗は、常勤薬剤師3名(私を除く)、パート薬剤師1名(週3日程度勤務)、事務2名がいる店舗で、手厚いフォローが可能な人数構成でした。
薬局長から、朝礼、清掃などの開店準備、閉店作業など1日の流れを教わります。
最初は薬の配置を覚えることからスタート。
納品された薬の棚入れ、処方箋を見て錠剤を集める作業を任されました。
数週間もすれば7〜8割程度覚えられます。
ステップ3:調剤の基本作業を習得(2週目以降)
2週目以降、混合軟膏の調剤や散剤計量、及びごく単純な錠剤の分包を教わりました。
薬を集めることに慣れてきた頃、先輩薬剤師に「処方箋をみながら用法用量も覚えていくといいよ」とアドバイスを受けたのが印象的でした。
ステップ4:監査・服薬指導デビュー(7週目前後)
店舗配属から約2ヶ月という頃、服薬指導デビューです。
初めての服薬指導は、抜歯後の鎮痛剤+抗生物質のシンプルな処方。
当時の店舗は監査した薬剤師が服薬指導まで担当するルールだったので、監査のポイントや記録の残し方を教えられ、服薬指導へと送り出されました。
指導後の薬歴記載は先輩の記載を参考にしながら行いました。
ステップ5:振り返りと実践で自走力をつける
私が初めて勤めた調剤薬局では、週1で業務の振り返りレポートを提出することになっていました。その週に学んだことや課題を書いて提出すると先輩が丁寧にフィードバックしてくれて、課題解決につながりました。
患者対応で困ったときには先輩薬剤師が代わりに説明してくれたことも。
私の配属された店舗のスタッフは未経験者に寛容で、「困ったら相談してね」という空気があり、業務が滞っていると先輩薬剤師が自然とフォローしてくれる環境でした。
安心して積極的に業務に取り組めたのが、その後の薬剤師としてのキャリアを積む土台となったことは間違いありません。
まとめ|調剤未経験でも大丈夫。今から始める薬局転職という選択


調剤未経験だからといって、調剤薬局への転職をあきらめる必要はありません。
実際、調剤薬局には未経験可の求人が多く、教育体制が整った職場も数多く存在します。
最初の数ヶ月は、薬の名前や調剤の流れに戸惑うこともありますが、無理な業務を任されることはなく、先輩薬剤師のサポートを受けながら少しずつ慣れていくのが一般的です。
人間関係や患者対応への不安も、職場選びを工夫することで大きく減らせます。
大切なのは、
- 「未経験可」の求人を選ぶこと
- 教育制度が整った薬局を選ぶこと
- 1人薬剤師にならない環境を選ぶこと
そして、そのために薬剤師専門の転職エージェントを上手に活用することです。
未経験から調剤薬局へ転職するなら、早めに情報を集め、選択肢を広げておくことが将来の安心につながります。
「今の働き方を変えたい」「もう少し余裕を持って働きたい」と感じているなら、まずは転職サイトをチェックするところから始めてみてください。


▶︎ 未経験からの調剤薬局転職、失敗しないために
調剤未経験からの転職でいちばん避けたいのは、「よく調べずに入社して、思っていた環境と違った…」と後悔してしまうことです。
「未経験可の求人かどうか」「教育体制は整っているか」「1人薬剤師になるリスクはないか」
これらは求人票だけでは判断できません。
だからこそ、調剤未経験の薬剤師は薬剤師専門の転職エージェントを使って情報を集めることが、実は最短ルートです。
転職エージェントなら、未経験者を受け入れてきた実績のある薬局、教育・フォローが手厚い職場、人間関係や職場の雰囲気といった「内部情報」まで教えてもらえます。
しかも、登録・相談はすべて無料。
今すぐ転職しなくても、情報収集だけの利用でも問題ありません。
「自分は本当に調剤薬局に向いているのか」
「未経験でも安心して働ける職場はあるのか」
そう感じているなら、まずは一歩踏み出してみてください。
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調剤薬局で新たなスタートを考えている方の参考になればうれしいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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