
薬剤師に転職しようと思ってるんだけど、「将来性がない」って言う人もいるみたい。今から薬局に移るのは厳しいのかな?
「薬剤師 将来性」と検索すると、「薬剤師は増えすぎている」「AIや機械に仕事を奪われる」「薬局は経営が厳しくなる」といった記事が出てきて不安を感じたことはありませんか。
結論、薬剤師の仕事はなくなりません。 ただし、仕事の「中身」は変わってきています。薬をそろえる仕事から、患者さんと向き合う仕事へ。そして、調剤未経験のあなたでもこれまでの社会人経験がそのまま武器になります。
私自身、製薬企業から調剤薬局へ移った一人です。現場で見てきたこと、実際に体験したことを、正直にお話しします。
- 薬剤師に将来性がないと言われる理由と、その実際
- 調剤未経験でも大丈夫な理由
- 入ってから後悔しないための、薬局の見分け方
どうぞ肩の力を抜いて、読み進めてください。
薬剤師に将来性がないといわれる3つの理由


ネット上で薬剤師に将来性がないと言われる理由をまとめると、以下の3点に集約されます。
- 薬剤師の数が増加している
- 機械や制度変化で少ない薬剤師でも回せるようになった
- 調剤報酬改定で薬局の経営が厳しくなっている
それぞれ解説していきます。
薬剤師の数が増えている
薬剤師の数は年々増加しています。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2014年末は約28.8万人だったのが、2024年末の時点で約32.9万人にまで増加しており(10年で+14.2%)、今も増加傾向が続いています。
薬局の数も増えていますが、2012年から2022年の10年間で比べると、薬局数の増加以上に薬剤師の数が増えています。参考:厚生労働省令和7年版厚生労働白書資料編2.保健医療


かつては6倍を超えるといわれた有効求人倍率も、今は3.12倍に下がっています(2026年9月現在、jobtagより)。



とはいえ、3.12倍はまだ高い水準であり、「仕事が見つからない」という状況ではありません。
機械や制度変化で少ない薬剤師でも回せるようになった
機械化で業務効率が上がったこと、制度改正で薬剤師の業務の一部を事務さんも担えるようになったことも、薬剤師の将来性がないと言われる理由のひとつです。
薬剤師の主な業務は、調剤・監査・服薬指導・薬歴管理です。しかし、調剤の大部分を事務さんがやってくれます。軟膏の混合や一包化、一包化薬の監査などもどんどん機械による効率化が進んでいます。
2015年、私が初めて入った薬局では調剤室は薬剤師だけの聖域でした。しかし、その後転職した薬局では、事務さんが当然のようにピッキングしており、今ではピッキングは事務さんの方が早くて正確なほどです。



薬剤師にかかる負担が減るため、「将来薬剤師の需要は減るんじゃないか」と不安を感じる人がいるのも無理はありません。
調剤報酬改定で薬局の経営が厳しくなっている
薬局の経営そのものも、楽ではなくなってきています。理由は3つあります。
- 調剤基本料の引き下げ:国は「立地に依存した経営」からの転換を薬局に求めています。病院の目の前や医療モール内など、特定の医療機関に依存する薬局(いわゆる門前薬局)は、基本料が下がる方向にあります。
- 薬価差益の縮小:薬の仕入れ値と、診療報酬上の薬価の差(薬価差益)は、薬局の伝統的な収益源でした。ここが、毎年の薬価改定で年々縮んでいます。
- 後発品の逆ザヤ:ジェネリック医薬品は、仕入れ値が薬価を上回ってしまう「逆ザヤ」になりやすいとされています。
この3つから読み取れるのは、「立地に乗っかっているだけ」「ただ調剤しているだけ」の経営は、これから立ち行かなくなっていく、ということです。



やっぱり薬剤師は将来性がないんじゃない?



薬局経営者のレベルで考えると厳しくなってくるかもしれません。でも、それと雇われて働く薬剤師の将来性が危ないという話はイコールではありません。
先にも述べたとおり、有効求人倍率はまだ3.12倍。まだまだ売り手市場といえます。
薬剤師という仕事そのものが、なくなるわけではありません。
では、何が変わってきているのか。次の章で、その中身をお話しします。
薬剤師の仕事はなくなりません。モノからヒトへ


ピッキングや一包化といった「モノに向かう仕事」は機械や事務さんに任せられるようになってきました。では薬剤師に求められる仕事は何でしょうか。
答えは、「人に向かう仕事」です。処方内容のチェック(処方監査、疑義照会)、患者さんに合わせた服薬指導、在宅医療への対応。これらは、患者さん一人ひとりの状態に応じて判断が必要な仕事で、機械にも事務さんにも代われません。
2020年9月に施行された薬機法の改正で、「薬を渡したあとも、継続して服薬状況を確認し、指導すること」が薬剤師の義務になりました。処方した医師へ情報を返すことも、努力義務として求められています。



「薬剤師にしかできない“人に向かう仕事”で専門性を発揮してほしい」という国からのメッセージですね。
- 減っていく仕事:薬をそろえる・数える→機械と事務さんへ
- 残って・重みを増す仕事:処方監査・服薬指導・薬歴・在宅など、人に向き合う仕事



対人業務が重視されるのはわかったけど、調剤未経験の私に務まるものなの?



大丈夫ですよ。次の章でお伝えします。
調剤未経験でも大丈夫な理由


これからの薬剤師に求められるのは、対人業務の力です。薬剤師としての経験はなくてもこれまでの社会人経験が武器になりますよ。
知識面の不安は心配ない
私が製薬企業から調剤薬局へ移ったとき一番心配していたのは、薬の知識不足で患者さんの命に関わるミスをしてしまうのではないかということでした。
でも、実際に働いてみて「そこまで心配することではなかった」というのが、正直な感想です。
- 同じ処方が続いている患者さんが多い(店舗による)
- 調剤システムが、併用禁忌や警告をアラートで教えてくれる
- 先輩に相談できる
- インターネット・AIで調べられる



知識をすべて頭に入れていなくても、調べる手段はいくらでもあります。
“覚える大変さ”は、昔より軽くなっている
最初に本当に大変だったことは、薬の名前や効き目、先発品と後発品の対応を覚えること、そして棚のどこに何があるかを覚えることでした。
しかしこれはもはや昔の話。
今はピッキングを事務さんが担当する薬局が増えています。かつての私が必死で覚えた「棚の場所」は薬剤師の覚えるべきことから外れつつあるのです。



調剤未経験の人が最初につまずきやすかった”覚える作業”の負担は、昔より軽くなっているのです。


これまでの経験が武器になる
対人業務が重視される流れのなかで、採用の場面でも、社会人としての経験・人柄・意欲が評価されるようになってきています。
私の場合、転職後の以下の経験が自信につながりました。
- 相槌だけで、気難しいといわれている患者さんが笑顔で帰っていった(対人スキル)
- 患者さんが機嫌よく話してくれるため、薬歴に必要な情報が自然と集まった(聞く力)
- パソコン操作に慣れていた(企業出身の強み)
- 製薬会社時代に身につけた「ミスをしたときにどう立て直すか、どう防ぐか」という考え方(CAPA思考)が、そのまま役立った
調剤の経験がなくても、あなたにも「経験」の欄にきっと書けることがあるはずです。
未経験者を受け入れ慣れている職場がある
大手チェーン薬局には、調剤未経験者向けの採用枠や研修制度があります。転職サイトを見ても「未経験可」という求人カテゴリーが用意されていて、実際に多くの求人が出ています。



そうはいっても、薬剤師としての専門性は求められるよね?



知識は徐々に身につければ大丈夫。次の章で、薬剤師としての生き残り戦略をお伝えします。
将来性のある薬剤師になるために、ママ薬剤師の生き残り戦略


将来も必要とされる薬剤師でいるためにできることを3つに絞ってお伝えします。ポイントは「専門性を少し高める」ことと「それが活きる場所を選ぶ」ことです。



全部やる必要はありません。気負わず、はじめの一歩だけでも十分ですよ。
①「研修認定薬剤師」|eラーニングでとれる
最初におすすめしたいのが研修認定薬剤師です。対人業務の土台になる資格で、あとで触れる「かかりつけ薬剤師」への入り口にもなります。
研修認定薬剤師の資格はeラーニングだけで取得できます。スキマ時間にコツコツやればよいので、忙しいママにも挑戦しやすくなりました。



私もeラーニングで取得しました。
おすすめのe-ラーニングについてはこちらの記事でまとめています。


②在宅に力を入れている薬局を選ぶ
在宅医療はこれから薬局が力を入れていく分野です。在宅に取り組んでいる薬局に入れば、自然と「残れる側」の経験、つまり患者さんに向き合う仕事を経験できます。



在宅って24時間対応が必要なんでしょ?それはちょっと…



私もそれが心配でした。でも、業務時間外に患者さんから電話がかかってきたことはほとんどありませんでした。
とはいえ、SNSでは「時間外の対応がつらい」という声も見かけます。同じ在宅でも、担当する患者さんの状態や薬局の体制によって負担は大きく異なります。詳しくは次の章の「在宅はどう回しているかを確かめる」でお伝えします。
③余裕が出たら、「かかりつけ薬剤師」を目標に
少し先の目標としてかかりつけ薬剤師があります。これは、一人の患者さんを継続して担当する、対人業務の象徴のような役割です。
かかりつけ薬剤師になるには、主に次の5つを満たす必要があります。
- 薬剤師として3年以上の薬局勤務経験がある(病院での勤務経験も、1年を上限に含められます)
- いまの薬局に継続して1年以上在籍している
- その薬局に週32時間以上勤務している(※育児で時短勤務中の人は「週24時間以上かつ週4日以上」でOK)
- 研修認定薬剤師の資格を持っている(=①で紹介したもの)
- 地域の医療活動に参加している
こうして並べると多く見えますが、ひとつずつ見れば、働きながら満たしていけるものばかり。時短で働く人には、勤務時間の緩和もあります。
もう一度いいますが、この3つ、はじめから全部やらなくて大丈夫です。
とはいえ、資格や経験を積んでも、もう一つ大事なことがあります。そもそも、その職場が長く働ける場所かどうかです。次の章で、その見分け方をお話しします。
将来性は「職業」より「職場」:長く働ける薬局の見分け方


調剤薬局ならどこに入っても大丈夫というわけではありません。ここでは、働きやすい職場選びのポイントをお伝えします。
「人手が足りているか」を確かめる
人手不足の薬局では残業が発生する恐れがあるため、入社前に確認しておきたいところです。
私は人手が足りない店舗で薬歴を書く時間もないまま次々と投薬をこなしていた時期がありました。平日は子どものお迎えで残業できないぶん、土曜の半日勤務のはずの日に、夕方まで残ることもありました。
面接では、処方箋枚数、常勤の薬剤師の人数、急に休みが必要になったときにカバーし合える体制があるかを確認しておくと安心です。
「休みの曜日と、毎週休めるか」を確かめる
調剤薬局は近隣のクリニックや病院の診療時間に合わせて開くため、土曜も開局している店が多いのが実情です。
休みのパターンは店舗によってさまざまです。求人票では、休みの曜日と、それが毎週なのかどうかを具体的に確認しておきましょう。
- 日曜と平日のどこか1日が休み(土日休みもあるが少ない)
- 日曜以外の休みは不規則なシフト制
- 「週休2日」は必ずしも「毎週2日休み」ではない



同じ会社でも店舗により休みが違うことがあります。
在宅は「どう回しているか」を確かめる
前の章の「在宅に力を入れている薬局を選ぶ」でお伝えしたとおり、在宅は“残れる側”の経験になります。ただ、その負担は薬局の体制しだいで大きく変わります。
在宅に力を入れている薬局を選ぶときは、「やっているか」だけでなく、時間外・休日の対応が実際どのくらいの頻度で発生するか、そして一人で抱え込まないバックアップ体制があるかまで、面接で聞いておきたいところです。
見学で、その場の空気を確かめる
最後は、求人票にも面接にも出てこない部分です。就職を決める前に、できれば一度、店舗を見学させてもらいましょう。
見るところは人によって違うと思いますが、たとえば次のようなことです。
- スタッフの年齢層
- 風通しがよさそうな雰囲気か
- 整理整頓ができているか
私の場合、同年代や子育て世代のスタッフが多い職場では、子どもの体調不良による早退や欠勤にも「お互いさま」と理解してもらえました。制度の有無ではなく、結局は人間関係です。そしてそれは、実際に行って自分の目で見てみないと、わかりません。
求人票で見えない部分は転職のプロに聞く
人員の充足具合や在宅の実情、職場の雰囲気などは求人票だけではわかりません。だからこそ、その地域の薬局の内情にくわしい転職のプロ(エージェント)に、店舗の実情を教えてもらうのが近道です。応募を決める前に、情報だけ聞くこともできます。
転職市場を知るだけでも、不安は減ります。 気になる薬局が「長く働ける職場」かどうか、まずはプロに聞いてみるところから始めましょう。
まとめ:薬剤師の仕事がなくなることはない


「薬剤師に将来性がないのでは」という不安に、この記事でお答えしてきました。最後に、要点を3つにまとめます。
- 薬剤師の仕事は、なくなりません。 薬をそろえる「モノに向かう仕事」は機械や事務さんに移り、患者さんと向き合う「人に向かう仕事」へと、中身が変わってきています。
- 調剤未経験でも大丈夫です。 知識面の不安は思うほど心配いらず、これまでの社会人経験が武器になります。
- ただし、どの薬局を選ぶかで、働きやすさは大きく変わります。 人手、休み、在宅の回し方、職場の空気は、入る前に確かめておきましょう。
薬剤師という”業界”の将来を、あなた一人で背負う必要はありません。大切なのは、あなたが長く働ける職場を選ぶこと。そのための材料は、もう手元にあります。
一つだけ、正直にお伝えします。「今の会社に残っていたほうがよかったかも」と思う瞬間が、まったくないわけではありません。給与など、続けていたら違ったかもしれない部分はあります。それでも私は転職したことを後悔していません。
転職後の後悔と、その対策については、こちらの記事でくわしくお話ししています。


自分の希望に合う薬局があるかどうか、まずは転職のプロに聞いてみるところから始めてみませんか。



私は「薬剤師なら誰でも大丈夫」と言うつもりはありません。でも、ここまで読んでくれたあなたには、こう思ってほしいんです。「私にも、まだ選べる道がある」って。


ともにがんばりましょう。
